1. 世界の女性リーダー分布 – インドの立ち位置
以前、インドの女性の社会進出についてまとめました。その記事では、インドにおける女性の労働力率や高等教育進学率のデータを紹介しました。詳しくは以下のリンクからご覧ください。
その記事に関連して、興味深い地図を見つけました。
この地図は、世界各国で女性リーダーを輩出した回数を示しています(2024年4月時点)。国ごとに色分けされ、女性リーダーの輩出数が多い国ほど濃い色になっています。
今回の地図を見ると、世界には女性リーダーを輩出した国が少なくありません。しかし、その回数には大きな違いがあります。
- 5回以上女性リーダーを輩出している国(濃い紫) 例:フィンランド、アイスランド
- 4回の国(紫) 例:ドイツ、ノルウェー
- 3回の国(薄紫) 例:イギリス、カナダ
- 2回の国(ピンク) 例:フランス、韓国
- 1回の国(黄色) 例:インド、オーストラリア
- 0回(グレー) 例:日本、アメリカ
この地図を見ると、インドは女性リーダーを3回輩出しているものの、多くの欧米諸国には及ばないことが分かります。欧米諸国では相対的に女性リーダーの輩出回数が多い一方で、アメリカは一度も女性の国家元首を誕生させていません。これは意外に思われるかもしれませんが、アメリカでは女性の大統領候補が何度か登場しながらも最終的に当選には至っていないという歴史があります。
一方で、日本のように一度も女性がトップに立ったことがない国もあるため、インドはアジアの中では比較的進んでいるとも言えそうです。
なぜインドでは女性リーダーが誕生し、日本ではいまだに女性の国家元首がいないのか? その背景を探っていきます。
2. インドの女性リーダーの歴史と現状
インドでは、これまでに複数の女性リーダーが誕生しています。代表的な人物を見てみましょう。
インディラ・ガンディー(Indira Gandhi)
- インド初の女性首相(1966~1977年、1980~1984年)
- 「鉄の女」とも呼ばれ、インドの近代化を推進
ドラウパディ・ムルム(Droupadi Murmu)
- インド初の先住民族出身の女性大統領(2022年~)
- 貧しい家庭出身ながら政治の世界で成功
ママタ・バナルジー(Mamata Banerjee)
- 西ベンガル州首相(2011年~)
- 与党BJPに対抗する野党の重要なキーパーソン
ニルマラ・シタラマン(Nirmala Sitharaman)
- インド初の女性財務大臣(2019年~)
- 以前は国防大臣も務め、国際的にも影響力が強い
インドで女性リーダーが誕生しやすい理由
- 政治家の家系が強い影響を持つ → 家族が政治家であることが多く、女性もリーダーになりやすい
- 民主主義の発展 → 多様な出自の人が政治に進出しやすい
- クオータ制(割当制度) → 地方政治での女性議員比率が高いため、国政にも女性が進出しやすい
3. クオータ制(割当制度)の導入と影響
インドにおける女性の政治参加を促進する重要な制度の一つが、クオータ制(割当制度)です。この制度は1993年に導入され、地方政治での女性議員比率を大幅に引き上げる役割を果たしてきました。
3.1 クオータ制導入の背景
インドでは長らく、女性の政治参加が制限されており、地方・国政の議会においても男性中心の政治体制が続いていました。特に農村部では、女性が政治に関与すること自体が珍しく、多くの女性が政治の世界に足を踏み入れる機会すらありませんでした。
1993年の憲法改正により、地方自治体政府において議席の3分の1を女性に割り当てることが定められました。
3.2 クオータ制の具体的な数値と影響
- 女性議席の割合: 地方自治体では、最低33%の議席が女性に割り当てられている。
- 一部州では50%に拡大: ビハール州、マディヤ・プラデーシュ州、ラジャスタン州などでは、クオータを50%に引き上げ、さらなる女性の政治参加を推進。
- 約100万人の女性が地方自治体で公職に就く: インド全土で数十万におよぶ女性議員が地方自治体に参画しており、政治の場での女性の存在感が高まっている。
4. まとめ – インドにおける女性リーダーの今後
インドでは、女性リーダーの誕生が決して珍しいものではなく、クオータ制の導入により地方政治での女性の活躍が広がっています。
一方、国政レベルでは依然として女性議員の割合が低く、政策決定における影響力は限定的なことが課題となっており、日本とどうように女性の政治参加についてはまだ道半ばといえそうです。