インドの人口の男女比のゆがみとその背景

インドの知識

これは、2021年の世界各国における女性の人口比率を示したものです。

インドは多くの国と比べて女性の割合が低いことがわかります。特にサウジアラビアや中国も同様に女性の人口比率が低い傾向にあり、それぞれの国で異なる背景があります。

例えば、サウジアラビアでは外国人労働者の多くが男性であるため、男女比が不均衡になりやすいです。一方、中国ではかつての一人っ子政策の影響で、男児を優先する文化が強く、出生時の性比に大きな偏りが生じました。

このように、男女比のゆがみは社会的・文化的な要因に深く根ざしており、長年にわたって問題視されてきました。本記事では、「男性が好まれる」理由と、それに関連する妊娠時の性別告知の禁止について、インドに住むサラリーマンの視点から実体験を交えて紹介します。


妊娠時の性別告知が禁止されている理由

インドでは、妊娠中の胎児の性別を病院で教えることが法律で禁止されています。この背景には、性別選別による中絶の問題が深く関わっています。

1. 病院での掲示例

上の画像は、私がインドの病院で見かけた掲示です。「胎児の性別を尋ねたり、開示したりすることは法律で禁止されており、違反すると罰則が科せられる」という内容が英語とヒンディー語で記載されています。

このような掲示は、インドの病院では一般的に見られ、政府が違法な性別選別を防ぐために厳しく取り締まっていることが分かります。

2. 性別選別中絶の歴史

過去には超音波検査で胎児の性別を確認し、女児である場合に中絶するケースが多発していました。そのため、政府は1994年に「「受胎前および出生前診断技術規制法(Pre-Conception and Pre-Natal Diagnostic Techniques (PCPNDT) Act)」を制定し、胎児の性別判定を厳しく規制しました。


インドで「男性が好まれる」理由

1. 経済的な理由

インドでは伝統的に、男性が家計を支える役割を担うことが多いです。そのため、親は「将来的に家族を支えてくれる」息子を望む傾向があります。特に農村部では、家族経営の農業やビジネスを継ぐために、男子を望む家庭が多いのです。

また、女性は結婚時に持参金(ダウリー)を求められる習慣が根強く残っています。法的には禁止されているものの、持参金の負担を避けるために、娘よりも息子を持つことを希望する家庭も少なくありません。

2. 相続と家系の継承

インドの多くの地域では、家督や財産は主に男性によって継承されます。そのため、男児を持つことが家系の存続や財産の維持に直結すると考えられています。

また、伝統的な価値観では、息子が親の面倒を見るべきという考えが強く、特に老後の生活を支えてもらうために男子を希望するケースが多いのです。

3. 社会的なプレッシャー

親族や地域社会からの圧力も影響を及ぼします。特に祖父母世代では「男の子がいないと家が続かない」「家族の誇りになる」といった考え方が残っています。

加えて、女性の教育やキャリアに対する偏見も影響しています。都市部では徐々に変化しつつありますが、依然として「女性は結婚して家庭に入るべき」という価値観が根強い地域もあります。


男女比のゆがみがもたらす社会的影響

1. 婚姻市場への影響

女性の人口が少ないことで、結婚適齢期の男性が伴侶を見つけにくくなっています。そのため、一部の地域では女性の誘拐や人身売買といった問題も発生しています。

2. 女性の地位向上の遅れ

男女比の不均衡は、女性の社会進出の遅れにもつながります。政府は女性の教育促進や就労支援を進めていますが、根本的な意識改革には時間がかかるのが現状です。

3. 法的対策と意識改革の必要性

インド政府は女性の権利を守るための政策を進めていますが、社会全体の意識改革も必要です。特に都市部では、ジェンダー平等に対する関心が高まりつつあり、若い世代を中心に価値観が変化していることは希望が持てる要素です。


まとめ

インドにおける男女比のゆがみは、経済的・社会的・文化的な要因が絡み合った複雑な問題です。「男性が好まれる」背景には、経済的な不安、家系の継承、社会的プレッシャーといった要因があり、それが性別選別中絶の問題を引き起こしてきました。そのため、政府は妊娠時の性別告知を禁止するなどの対策を講じています。

しかし、近年では教育の普及や女性の社会進出の推進により、少しずつ状況が改善されています。男女平等の意識がさらに広まり、インド社会が変化していくことが期待されます。

インドで生活していると、この問題を身近に感じる場面も多く、日々のニュースでも取り上げられることがあります。今後もこのテーマについて注目し、実際の変化を見守っていきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました