本日は、インドを理解する重要キーワードの一つである、「農村」について触れたいと思います。
インドには、日本の約 8.7 倍の広大な国土に約14億人が暮らしています。ご存じの通り人口は世界1位ですが、その14億の人口の6~7割は「農村」に住んでいると言われています。インドの人口を取り扱った統計データに触れていると、農村=RuralやVilleageという言葉をしばしば目にします。その反対は、都市部=Urbanとなります。このRural/Urbanという記載は、新聞などでもよく使われる言葉となり、インドの全体像を理解するためには理解必須だと思っています。
また、農村はその人口の多さから選挙時には重要度が増し、各政党ともにいかに農村で得票を伸ばすかが選挙の勝敗に大きな影響を与えます。
都市部(Urban)と農村(Rural)の人口
こちらが、具体的な都市部=Urban/農村部=Ruralの人口の比率を示した数字となります。比較のため、中国のデータも掲載しておきます。
都市部(Urban) | 農村部(Rural) | |
インド(2011年) | 3億7,710万(31.2%) | 8億3,309万(68.8%) |
中国(2011年) | 6億9,079万(51.2%) | 6億5,656万(48.8%) |
Source:インド統計局、中国国家統計局
2011年の国勢調査の結果ですので、少しソースが古いのですが、インドでは2011年を最後に国勢調査が実施されていません。本来であれば、10年後の2021年に実施予定だったのですが、コロナ禍により延期となり、それ以降も延期されたまま今日に至ります。
「農村」の定義とイメージ
インドにおける「Rural」は政府ホームページにて、以下の通り明確に定義されています。
- 人口が5,000人未満
- 人口密度が400人/平方キロメートル未満
- 男性の25%以上が農業関連に従事
この「農村」の具体的イメージですが、GoogleMapの衛星写真の機能を使うととても分かりやすいです。どこでもいいのですが、首都デリー近辺を見てみましょう。画像の右側、デリーの東側に広がっている緑の部分が農村地帯です。
少し近づいてみます。緑の中に白い斑点が無数に存在してるのがわかりますでしょうか?
例えば、赤い線で囲った部分になります。この一つ一つが村を表す「Villeage」と呼ばれる集落であり、こういった土地が農村となります。
もう少し拡大してみましょう。道が入り組んでいる集落が見えてきました。
さらに拡大してみます。家のイメージがはっきりと見えてききました。
「農村」の風景
さらに具体的にイメージしていただくために、私が北インド、南インドそれぞれ農村を訪れた際に撮影した写真をご紹介したいと思います。
北インド
まずは、北インド、デリーから北に車で2時間ほど行ったハリアナ州のソニパット近郊に位置する農村地帯です。
集落の内部です。
牛糞に藁を混ぜてあわせて干した燃料で、調理に使われます。
周囲にはさとうきび畑が広がっていました。
南インド
こちらは、南インド、バンガロールから2時間のマイソール近郊の農村地帯です。雰囲気から南国感が伝わってきますね。
洗濯中です。
北インドのサトウキビに対してこちらは、稲作です。
都市化の進展①他国との比較
続いて、農村人口比率(都市化)についてみてみたいと思います。世界銀行(World Bank)のホームページにとても見やすくまとまっている資料がありました。農村人口の比率を視覚的に示しています。色が濃いほど農村人口比率が高くなっています。これを見ても、インドは世界の中でも農村人口比率が高い国のグループに属することがわかります。
*データが2022年時の予測データであるため、上記の国勢調査のデータとはやや異なる点にご注意ください。インドの2022年のデータは、64.13%となります。
都市化の進展②経年トレンド
今度は経年変化で見てみたいと思います。比較のため、インドの他に日本、中国、そしてタイを掲載しています。ご想像の通りと思いますが、どの国も経済の発展とともに、農村から都市部への人口の移動が起こっています。中国では、都市部の人口比率が農村部を上回ったのが2011年ですが、そこから10年と少しで農村人口は36%まで低下しています。データソースは同様に世界銀行(World Bank)です。
まとめ
現在インドにおいても、まさに農村部から都市部への人口の移動が起こっています。都市部の郊外に行くと、雨後の筍のように、新しいコンドミニアムが林立し始めていますし、都市間を結ぶ道路網も急速に整備されており、これから都市化のスピードが増していくのは確実でしょう。また、それに伴い、先進国が経験してきた、大気汚染・渋滞などの問題も顕在化しています。
以上、本日はインドの人口動態・今後の社会構造の変化を見ていくための必須知識しての「農村」をご紹介させていただきました。
それではまた!