インド人に肥満が多い理由はベジタリアンの食生活にある?

インドの日常

インドはベジタリアンが多い

インドを訪問したことがある方、またはインドの食事に詳しい方にとっては常識かもしれませんが、インドは「ベジタリアンが多い国」です。ベジタリアンは世界各国にいますが、欧米では健康や動物保護を理由にベジタリアンになる人が多いのに対し、インドでは宗教や文化的背景からベジタリアンの割合が比較的高く、特にヒンドゥー教徒の多い地域では肉を食べない人も少なくありません。実際、各種調査によるとインドのベジタリアン比率は約30%程度とされています。

しかし、「ベジタリアン=健康的」と考えるのは早計です。実は、インドでは肥満人口が増加しており、その一因としてベジタリアンの食生活が関係していると考えられます。

私自身、本記事で触れる内容を知るまでは、なぜベジタリアンの食生活が肥満につながるのか不思議でしたし、インド在住者のSNSやブログなどでも同様の疑問を抱くコメントを見かけます。

なぜベジタリアンが多いインドで肥満が問題となっているのか、その背景を彼らならではの食生活の観点から解説します。


インド料理と肥満の関係

インド料理のイメージは?

インドの食事と聞くと、脂っこいカレーや甘いデザートを思い浮かべる方も多いかもしれません。実際、現地でインド料理を食べた経験のある方の中には「とにかくオイリー」「デザートが極端に甘い」と感じた方もいるでしょう。

例えば、インド(特に北インド)を代表する食事として、以下のようなメニューがあります。

バターチキンカレー(濃厚なバターとクリームを使用したカレー)

グラブジャムン(シロップに浸した揚げドーナツのようなデザート)

パコラ(揚げ野菜のスナック)

これらの料理は確かに脂質や糖分が多く、カロリーが高い傾向があります。

実際のインドの家庭料理とは?

しかし、これらの特徴はインド料理全体を表しているわけではなく、外食でよく見られるものです。実は、インド人自身も「外食はオイリーだから避ける」という方が少なくありません。家庭料理は意外にもあっさりしており、揚げ物や過剰な甘さのデザートを日常的に食べるわけではないのです。

むしろ、インドで肥満が多い本質的な理由のひとつは「ベジタリアン食そのもの」なんです。


ベジタリアン食の特徴と肥満の関係

インドのベジタリアン食は炭水化物中心

インドのベジタリアン食の特徴は、炭水化物中心の食生活であることです。

例えば、一般的なインドの家庭料理を見てみましょう。

  • 主食: チャパティ(小麦の薄焼きパン)
  • 副菜: ダール(豆スープ)、サブジ(野菜炒め)
  • 乳製品: ヨーグルト(ダヒ)

これらの食事は栄養バランスが良さそうに見えますが、食事の総量に対して、炭水化物の割合が高いのが特徴です。

以下の写真は、実際のインドの一般家庭のご自宅で取らせていただいた写真です。

昼食:ライス、ダル(豆スープ)、野菜
昼食:ライス、ダール(豆スープ)、野菜
夕食:チャパティ、ダル(豆スープ)、サブジ(オクラの炒め物)
夕食:チャパティ、ダール(豆スープ)、サブジ(オクラの炒め物)

植物性たんぱく質の特性と摂取効率

ベジタリアンの食事の特徴は、体を維持するために必要な三大栄養素の一つであるたんぱく質を、植物性たんぱく質に依存していることです。しかし、植物性たんぱく質は動物性たんぱく質に比べて必須アミノ酸のバランスが不完全なため、効率的な利用が難しいという問題があります。

植物性たんぱく質の吸収効率を上げるためには

なぜ植物性たんぱく質の摂取効率が低いのか?

  • アミノ酸のバランスが不完全:植物性たんぱく質は、必須アミノ酸の一部が不足していることが多い。
  • 食物繊維が多く、消化に時間がかかる:豆類には食物繊維が多く含まれるため、たんぱく質の吸収が遅くなる。

このため、植物性たんぱく質の摂取には食材の組み合わせが必要になります。

炭水化物と同時摂取でたんぱく質の吸収効率が改善する

例えば、

  • ダール+ライス(豆カレーとご飯)
  • チャパティ+パニール(小麦とチーズ)

といった組み合わせは、アミノ酸のバランスを補い合い、たんぱく質の吸収を高めます。

しかし、ここで問題となるのは、植物性たんぱく質を効率よく摂取するためには、動物性たんぱく質を摂る場合よりも多くの穀物=炭水化物=糖質を摂取しなければならないという点です。結果として、糖質の過剰摂取が肥満を引き起こしやすくなるのです。

炭水化物過多が肥満を引き起こす

ダイエットのために、糖質制限=炭水化物の摂取の制限が効果的なことが知られていますが、炭水化物の過剰摂取と肥満の関係は以下の通りです。

  • 炭水化物の摂取が多いと、血糖値が急上昇しやすくなります。
  • インスリンの分泌が増加し、余った糖分が脂肪として蓄積されやすくなります。
  • その結果、体脂肪が増え、肥満の原因となるのです。

まとめ:インドで肥満が多いのはベジタリアン食の影響か?

ベジタリアン食と肥満の因果関係をまとめると?

インド人に肥満が多い理由の一つは、ベジタリアン食が炭水化物中心で、たんぱく質の摂取効率が低いため、結果的に糖質過多となることにあると考えられます。

主な要因】

  1. 炭水化物の摂取が多くなりがち(白米や小麦製品が主食)
  2. 植物性たんぱく質は効率的に摂取するのが難しく、組み合わせに依存する
  3. たんぱく質を確保するために穀物(糖質)を多く摂取しがち

その結果、糖質過剰摂取によるインスリン分泌の増加 → 体脂肪の蓄積 → 肥満 という流れが生まれやすくなっています。

加えて、インドでは揚げ物やギー(バターオイル)を多用する食文化があります。サモサ(揚げ餃子)やパコラ(野菜の天ぷら)などは高カロリーなスナックとして人気があり、これも肥満を加速させる要因になっています。

「ベジタリアンだから健康的」というイメージは必ずしも正しくありません。むしろ、インドではベジタリアン食が主流であるがゆえに、炭水化物過多による肥満が問題となっているのです。

参考文献

実は私自身も、本記事で触れた以下のポイントについては知りませんでした。

植物性たんぱく質は動物性たんぱく質に比べて効率的に摂取できない。それを補うために、炭水化物を多く食べる必要がある。

  • つまり、植物性たんぱく質を効率よく摂取するためには、動物性たんぱく質を摂る場合よりも多くの穀物=炭水化物=糖質を摂取しなければならない

ちょうど私がダイエットを考えていた時に、以下の本を読み、この事実を知りました。その結果、なぜベジタリアンなのに太っている人がいるのかについての理解が深まり、とてもいい勉強となりました。本記事の本題とは少し外れますが、とても良い本だと思いますので、ご紹介させてください。

炭水化物が人類を滅ぼす

今後も、インドのストリートフードや外食文化について深掘りしていきますので、お楽しみに!

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